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2011年11月23日水曜日

昇竜雲と母雲。

エッセイ 第7話

『あのヘソ曲がりは、絶対にうちの母親だな。。。』
私は、標高2000mの峠で呟きました。

☆

私は、40代前半で母親の介護生活に入りました。
まだ早い感じがしますが、末っ子の私ですからお年頃です。

40前後で子供を産むと、こんな年齢関係になります。
早く産んだ子供では、老老介護になりかねませんので、体力的にはこの方が良い
ですが、働き盛りの時なので仕事との両立は無理だと思います。

私は仕事を辞める事にしました。再度同レベルの社会復帰は難しいでしょうが。。。
親としても子にしても時を選べない宿命です。

本当は、姉に介護して貰いたかった母ですが、やはり働き盛りで私より責任が
重い仕事で多忙な姉には、選択の余地はありません。

余命の見えた介護でしたが、病院での付き添い・その後の自宅介護と家事など、
やはり心身ともに重労働でした。

やがて私は「介護うつ」になりました。





 「初秋の冷風」
FinePix S1Pro Tokina100mm  f3.9 s1/362
(クリックで拡大、1200×800)

(フォト:1)日々寒くなり、木々を抜ける風も冷たく感じますね。
今はまだ緑の葉も、直ぐに色付いて来そうな寒さです。
来週には黄金色になるのでしょうか。これからが私の好きな季節です。

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その母を春先に亡くし、法事に追われ、整理に追われ、やっと心身が落ち
着いて来て、先々の事を考えられるようになったのは初秋の頃でした。

そんな自分の慰労?も兼ね、社会復帰行事として取材旅行先に選んだのは、
行き慣れた欧州アルプスの晩秋でした。

それは、浦島太郎状態で社会との関わりを無くした私にとって、今後の人生・
仕事を考える旅でもありました。

過去、欧州に春・冬・夏と取材に行って思ったのは、晩秋がこの時の私には
一番似あっているという事です。人生の落日に向き合った後でしたから。。。







 「実りの彩、トキワサンザシ(ピラカンサ or ピラカンサス)」

FinePix S1Pro Tokina100mm  f3.0 s1/362
(クリックで拡大、1200×800)

(フォト:2)人は、食べられない(青酸毒)ですが、その彩りには誘われます。
フィルムでは白飛びしそうな露出ですが、このデジタルは踏ん張ってますね。
背景の濃緑も深い色合いですが、これはレンズの描写が濃厚なせいです。
古いレンズですが良い玉に出会えました。

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欧州アルプスは、日本より緯度が高いので、晩秋と言うより初冬の寒さです。
空港で車を借りた私は、一路行き慣れたアルプスの峠道へと向かいました。

この年は、例年より初雪が遅く、まだ一回しか降雪がないとの事でした。
それでも早くしないとアルプスの峠道は、皆直ぐに通行止めになってしまいます。

車窓から見える薄く初雪が積もった山々は、麓には緑が残っていますが、中腹は
スッカリ紅葉していて三色の彩りを見せていました。

もう観光客には、殆ど会う事も無く、スキーシーズンまでの間の閑散期は、誠に
ドライブ日和です。でも観光登山鉄道も終了間近、宿探しも大変です。






 「輪そして和」
FinePix S1Pro Tokina100mm  f2.8 s1/256
(クリックで拡大、1200×800)

(フォト:3)緑・黄・紅・青、彩り多彩な秋色です。
踊る輪達がやがて和になる、素敵なハーモニーでした。

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高原の定宿に泊まり、翌日の早朝から峠めぐりを始めた私は、先ずは手近な
峠に向かいました。

2000m級のこの峠には、残雪こそ無いものの凍てつく空気が攻撃的です。
森林限界近くのこの場所は、雲が手に届きそうに見える撮影ポイントです。

針葉樹の林にはまだ朝靄が残り、白い煮こごりのようなお姿をしていて、
空には白い綿雲が低く広がり、その峠でせめぎ合っていました。

そのうちに雲間から白い腕のような雲が林に向かって滴り落ちて来ました。
それに応じるように林の靄達が吸い寄せられるように集まって盛り上がって
来ます。

それはやがて昇竜のように天に向かって太くそびえ立って行きました。
天に昇った龍は、雲間の腕に摑まれ滝の逆流のように靄達をどんどん雲に
取り込んで行くのでした。

なるほど雲と靄とは兄弟なのだなと納得の競演です。まもなく靄達は、他の
綿雲達と共にユックリと流れて行きます。その姿は合流した羊の大群の
ようです。

そんな中、それより低層を真逆に流れる雲が行きます。朝日を浴びて紅く
染まるその雲は、唯我独尊と言わんばかりです。

その姿は、死んだ母親そのもののような気がしました。

『なんだ、人は死んだら雲に成るのか。。。』

何の根拠の無いその思い付きの自分の言葉に、妙に納得した瞬間でした。

先程の昇竜のように、人の魂は天に招かれ、召されて行くのかも知れません。

そう思うと何か死を迎える事が辛い事に思えなくなりました。
空を流れる綿雲が皆亡き人の集いにも見え、とても清々しい気分です。

千の風も良いですが、空を巡る雲も良いなと思いました。新たな悟りです。
ところであなたは、どんな雲になりたいですか。。。







「午後の仙人」
FinePix S1Pro Tokina100mm  f5.7 s1/362
(クリックで拡大、1200×800)

(フォト:4)植物園の仙人さまは、いつもココにおいでになります。
兄弟の黒猫で、相方はいつもこのテーブルの下にいます。
そのお姿があまりに素敵なので、ウチのトレードマークにさせて頂き
ました。普段は愛想のいい仙人ですが、時々野生の顔を見せます。
そんな顔がなんか、凛!!としてますよね。

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撮影記:

三週間のあいだアルプスをさ迷った私は、湖畔のホテルに帰国まで二週間
滞在しました。宿探しにも疲れたからです。

フランスから働きに来ていたホテルの若い女性や、街のレストランの台湾の
若者など馴染みも出来て、再出発の心の整理がつきました。

あれから欧州には行く機会が無くアジアばかり行っていますが、またあの
峠に行き、天界と人界の狭間の駆け引きを見たく思っています。

きっと色々な亡き人達や愛犬愛猫達にも会えるような気がしますので。。。








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2011年7月27日水曜日

屋根の上に登る日本が誇る伝統と、「雲景」写真。

エッセイ 第2話

『今日は、何だか綺麗な夕焼けになりそう。』そんな予感がしました。
飲み物持って、出掛けましょうか。楽園へ。

☆

昭和の時代のドラマや漫画に、よく主人公などが屋根に登って星を
見たり、二人で夕日や花火を見ながら話したり、猫と過ごしたりする
場面がありましたよね。

アレって平屋が多かったし、兄弟が多くて自分の居場所が無かったり、
親に怒られたり失恋したりして、泣いている所を見られたくなかったりと、
一番身近な現実逃避場所だったのが理由なのでしょうか。

今なら、父親の部屋が無くても子供の部屋はあるし、兄弟も少ないし、
家電(イエデン)使わなくても、携帯でいくらでも愚痴を聞いてくれる友達
もいるし、ネットで晒して笑い飛ばす事も出来ますよね。

 「今日は綺麗」
FinePix S1Pro Tokina28-70mm(70mm) f10.6 s1/470
(クリックで拡大、1200×800)
(フォト:1)22日、久しぶりに綺麗な夕日が出ました。細長い黒雲の下を
通る光も良い感じです。
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でも、今でも屋根に登るのって、チョッと憧れですよね。私の子供の頃に
住んでいた家は平屋でしたが、瓦が戦後の品質の良くない時代のセメント
瓦だったので、親に絶対登っては駄目と言われていました。

実際の話、大きな桃の木が庭に有ったのですが、その実が屋根に落ちると
その瓦が割れる音がしました。そんな訳で、その憧れが実現できたのは、
中学生になる前に家を建て直した後でした。

二階のベランダに有る物干し台をよじ登り、初めて上がった時の感動は、
それはそれは開放感がイッパイでした。学校の屋上では味わえない恐怖と
柵の無い風通しの良いサッパリ感が最高でした。


 「雲がシマシマに」
FinePix S1Pro Tokina28-70mm(70mm) f9.5 s1/362
(クリックで拡大、1200×800)
(フォト:2)その光が段々と黒雲をシマシマにして行き、何やらどこかで見た
ような海産物に見えて来ました。
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写真撮影は、小学生から暗室作業をするくらい好きでしたが、中学生になり
作品制作を考えるようになった時に、最初に出会った題材が「雲景」でした。

友達たちは、みんな写真と言えば鉄道写真で一色の時代、私も何度か付き
合って車両区に行ったり、SLを撮ったりしましたが、私が目覚めたのは、雲の
変幻自在の姿と、光線具合で変わる錦の色でした。

釣りはヘラに始まりヘラに終わると言いますが、(諸説有)私的には、写真は、
「雲景」に始まり「雲景」に終わるのだと、この時に悟りました。(どんな中学生?)



 「車えび雲に」
FinePix S1Pro Tokina28-70mm(28mm)  f8.2 s1/279
(クリックで拡大、1200×800)
(フォト:3)これはどう見ても、あの車エビではありませんか。シマシマ具合と
いい、ヒゲのツンツン具合といい、その「短足」をバタバタさせて天に昇るような
お姿です。
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しかし、ベランダの雨漏りを止めるために、屋根を付ける事になり、私の悟りの
楽園は、あえなく閉園となりました。その後は旅の写真を撮ったり、水中写真を
始めたりで、楽園に戻るのは、だいぶ先の事でした。

会社を辞めてフリーになった頃、長年屋根の塗り替えを頼んだ大工が、高額な
修理代を請求するので、私が代わりに作業するようにと親が言って来ました。

長梯子が無いので、ベランダ外側に脚立を縛り付けて、恐々登ったそこは、
あの悟りの楽園でした。(「お帰り!」との空耳が聞こえました。)

何とか楽に登り降りが出来るようにと、ベランダ屋根の一番上を開閉式に
改造して、楽園への階段を確保しました。

それからは、マメにペンキの塗り替えをしたり、隅田川の花火大会を見たり、
(第一・第二会場とも遠いですが、尺玉クラスは、ビルの間から見えます。)
夜の流れる雲をいつまでもいつまでも眺めたりしました。特に台風前の不安
定な天気の中、どんどん流れて行く雲に心がときめきます。嵐の前の静けさ
と躍動感に。(真上を通り過ぎる雲は神秘的ですよ。)



「下には子えび達も」
FinePix S1Pro Tokina28-70mm(70mm) f7.1 s1/197
(クリックで拡大、1200×800)
(フォト:4)よく見ると、お腹の下辺りにも子エビ達が、バタバタしております。
とんだ親子の競演を堪能した夕方のひと時でした。
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傾斜の緩やかなトタン屋根の我が家の楽園は、時には客人の接待や、近所の
子供達の花火見物の場としても活躍致します。

視界を遮る物の無い屋根の上で、流れる雲を眺めつつ何度もそのまま寝て
しまった事もあります。そして最近ここから撮った写真のホームページも作り
公開しております。(勢い余って、本当にスピンアウトして作ってしまいました。)

勿論カメラは、我がS1Proです。細やかな雲のトーンは、その画素数の少なさ
から、お世辞にも綺麗ではありませんが、フィルムぽいザラザラ感を楽しんで
頂けたら幸いです。

雲の動物園 Cloud Animal https://sites.google.com/site/cloudanimalzoo/


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撮影記:

我が家の楽園には、よく色々な動物雲が尋ねて来てくれます。大物が多いので
皆さんは道を歩いていて全体像が見えず、気が付かないと思います。
車えびの家族も、そんな大物のメンバーです。

チョッと見る場所が違うだけでも全然違うものに見えますし、その美形は一瞬です。
一期一会の出会いと別れ。そんな重たい関係ではなく、ただ楽しむだけが最高の
心構えかも知れません。

最近、近所のビルが解体されたので、何十年ぶりに楽園から東京タワーが見える
ようになりました。

その遠いお姿は、やはり昭和の顔だな~と思います。そこから東に目を向けると
昇竜中のスカイツリーが、マンションの上からこちらを見ています。
これからの動物雲フォトにも登場するかも知れない、新しい楽園の仲間です。






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